『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ [SF]
『ねじまき少女』を途中で放り投げている身としては、同じ作者のこの作品をちゃんと読み切れるのか不安だったのだが、こちらは短編集なので、思いの外、楽に読めた。単にもう長編がきつくなってきているってことなのか。
まーでも、どの作品もどんづまりの世界が舞台なので、楽しく明るく読むのは無理。後味苦い苦い。
かつては栄えていて今は衰退の一途、という今の日本と似ていなくもない世界の話はどよよよ~んと重苦しく、明るい結末なんて望めない。
それでも、だからこそ、SFなのに妙にリアル感があって引き込まれる。
『ポケットの中の法(ダルマ)』 デビュー作らしいが、すでに、めっちゃ格差社会の底辺の方の描写がエグイ。
『フルーテッド・ガールズ』 怖いっす。いろいろ。これまた超格差社会。お屋敷の女主人も怖いが、フルーテッドされたヒロインも怖いし、話自体の閉塞感がすごい。夢も未来もありゃしない。
『砂と灰の人々』 タイトルは人々だが、これはもうすでに人間って言えるのか?というね。
『パショ』 比較的前向きな話なのかと思っていたら・・・ま、ある意味、前向きなのか。
『カロリーマン』 この辺から『ねじまき少女』的世界が。要するに、鉱物資源が枯渇してバイオで作り出した動物(要飼料)がエネルギー源となり、いろいろいじくりすぎて穀物が人災的疫病で壊滅的打撃を受けたため、病気に耐性のある穀物の種子を扱う企業が世界を牛耳ってるつうね。『ねじまき』を読んでいてその辺がいまいち理解できていないまま進んでしまって、「???」だったのが、短編をいくつか読むと何となくわかったような気がする。ので、この後、挫折している『ねじまき少女』の続きを読みます、忘れぬうちに。ええ、ええ。
『タマリスク・ハンター』 短くてさくっと読めるが、だからといって楽しいわけではない。これまた、未来のないやりきれない話。
『ポップ隊』 もーね、ショッキング。ポップの意味にぞっとする。この楽しげな語感で。残虐なのでお子様は読んじゃダメ。
『イエローカードマン』 これはもろ『ねじまき』世界。
『やわらかく』 これはSFではなくサスペンスとかミステリーとかそっち系の作品かな。突き抜けた明るさの中に絶望感。
『第六ポンプ』 近未来の話だと思う。こんな酷い世界ありえねーーー!といいきれないのがつらいディストピア話。
楽しい話が一個もない。
でも、お勧めデス。
今は文庫版も出てるので、新書版のSFシリーズよりはお手頃価格で手に入るヨ!
発売後すぐ買ったくせに放ったらかしておいて文庫が出てから読んだので、なんだか差額分損した気分だ。自分が悪いのに。
kindle版も出てるヨ!
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